KICSコラム
中学英語教科書改訂
今年、愛媛県の中学校で使用する英語の教科書が改訂されました。今後大学入試で4技能(読む、書く、聞く、話す)が試されることになり、その対応策だと考えられます。文部科学省の学習指導要領によると、「これからの社会の変化に対応して自分で考える力を養う」ということを目標にしているとのことです。
しかし、英語に関して私の見る限りでは、単に小学校から前倒しで英語を導入することで、高校卒業までに学ぶ英語の量を増やすことが目的のように思えます。具体的には中学の教科書も以前は2年生で学んでいたことを1年生の教科書に入れ、3年生で学んでいたことを2年に前倒しし、全体で量を増やす結果になっています。今でも十分忙しい学生にさらに負荷をかけるだけのような気がします。
私が長年英会話講師をやっていて思うことは、なんでもそうですが、基礎がとても大切ということ。英語で言うと中学3年間で学ぶ英語がとっても大切です。ここをおろそかにすると後どんなに上積みしても意味がありません。逆に、中学3年間の英語がしっかり理解できれば、英語は話せます。今以上に量を増やす必要は全く感じません。それよりも今の英語教育の問題点は明治から変わっていないクオリティーにあります。
例えば、新しくなった中学1年生の英語のワークブックの説明の中にもいまだに、
I am happy.
私は です しあわせ
と書いてあります。皆さんも記憶にあるかもしれませんが、am = ですという訳。これは大きな間違いです。am/is/areはbe動詞といい、日本語にはない言葉です。また逆に英語は、文中の単語の役割を示す言葉である助詞(は、が、に、を、など)がありません。その結果、英語では語順で文中の単語の役割を決めています。例えば
I watch TV.
He plays soccer. など。単語の役割は、主語+動詞+その他の順です。
そこで、言いたいことの中に動詞が出てこない文も、同じ語順になるようにbe動詞があります。つまり、I happy.だとhappyは動詞に聞こえます。I happy now.とか言ってしまうと、「私は今を幸せにします。」と言っているようにも聞こえます。それを避けるためのパーツがbe動詞であり、付けるとちょっと丁寧に聞こえる効果がある「です」とは全くの別物です。
このように、日本人が英語を理解できるようになるためのノウハウが昭和どころか明治から変わっていない方が問題で、そこを改訂しないで量だけ増やしても残念ながらあまり意味はないでしょう。